東海の百山完登に向けて、最後の山となる燕岳と大天井岳を制覇すべく、単独行の日帰りで計画をしていた。普通は1泊か2泊していく行程なのであるが、これだけの距離を単独行で歩けるのかどうか、不安があった。一度経験した山ならともかく、初体験の山だたら心配であった。インターネットで調べたところ、単独行で同じコースを歩いていた人がいた。それで自信を持ち、いよいよ実行日が近づいたとき、なんと同行者が現れた。これぞ天の助けである。同行者は自分より山の経験は浅く、足手まといになること(失礼)が予想されたが、単独行で行くことの不安と心配を解消するのに十分あまりある。とにかく少しでも不安を感じたり、予定時刻に遅れるようなことがあるならば、諦めて下山するという気持ちで出かけた。以降は我々にとって決死の思いでの山行き記録なのである。
夜行日帰りなので、前日土曜日の15時15分に自宅を出発した。とにかく早朝に登山開始なので、その前日に登山口に到着しておこうという計画なのであった。仕事中は午前中に終え、すぐに帰宅して準備をした。前日に左耳のうしろが腫れるというアクシデントがあり、午前中に医者へ行き、薬を持っての山行きであった。15時15分に出発はしたものの、登山準備の買い物や途中の渋滞もあり、土岐ICで中央自動車道に乗ったのは、17時00分であった。中央自動車道から長野自動車道をひた走り、豊科ICで下りて、穂高町で食料を買い込んだ。あとは、中房温泉の案内看板により、中房温泉へたどり着いた。登山者専用の無料駐車場があるのでそこに入れる。20時00分の到着であった。それから食事をして、薬を飲み車中泊とした。21時00分には就寝したが、しかしながら寝付けず、川のせせらぎの音を聞いたり、満天の星や、やがて昇ったきれいな月を見たりしてまどろんだ。しかし、これから登るんだという「意気込み」がこみ上げて、気持ちは高ぶってきた。うとうととまどろみながら、2時30分には起床した。早速朝食をとり、薬を飲む。そして、3時13分に駐車場を出発する。舗装道路を中房温泉まで歩く。3時20分に中房温泉の登山口に着く。ここが実質の登山口である。トイレ休憩をして、3時28分にベッドランプをつけ出発した。約30分遅れか。はなからこの調子では先が思いやられる。なるほどアルプス3大急登と言われるだけあって、初っぱなから急登が続く。だが、それは事前準備で十分承知している。今日は日曜日のため、多くの登山者を予想していたが、この段階ではもちろん登山者など1人もいない。3時32分に標高1500mを示す木柱があるところに着いた。そして、3時54分に第一ベンチに着いた。ここには「中房温泉1.0km、燕山荘4.5km」という表示がある。さらに、ここには水場があり、無料の水を得ることができる。以後約30分ごとにベンチのある休憩所があり、登山者にはありがたい。しかし、この先無料の水は一切ない。自分の背中に背負って行くか、他人に背負ってもらって、有料(その労賃)で手に入れるか、あるいは、山小屋で買うかである。山では水は貴重なのだ。物の大切さを教える格好の場となるのが山だと思うが、考え過ぎか。さて、そんなことを考えながら、急登をこなし、4時18分に第二ベンチに着いた。ここは、「標高1620m、中房温泉1.7km、燕山荘3.8km」となっている。ここでヘッドランプをはずし片づける。そして、4時26分にここを出発し、4時29分に一旦急登が緩やかになり、吊り尾根を渡る。しかし、すぐにまた、急登が始まる。なかなか楽をさせてくれない。途中の4時40分にあろうことか登山靴の口が開いてしまった。つま先のゴム底がはがれたのだ。すぐに応急手当をして進む。それなりの道具を持参きて助かった。この先で、有明山の稜線から日の出があり、しばし休んで日の出を見る。そして、5時01分に出発した。するとすぐの5時02分に第三ベンチに着く。ここには、「中房温泉2.5km、燕山荘3.0km」の表示がある。ここを出発するも、急登にへこたれて、途中で5時20分から5時25分まで休憩した。そして、5時38分にやっとの思いで富士見ベンチに着いた。「中房温泉3.1km、燕山荘2.4km」の表示板がある。標高は、2200mで、合戦尾根まで0.7kmである。これを見て、あと700mかとがぜん元気が出る。ここを5時43分に出発し、6時06分に合戦小屋に着いた。ここは、「中房温泉3.8km(下り1.5時間)、燕山荘1.7km(上り1時間)」の地点である。まずは、ベンチで大休止となる。お湯を沸かしてコーヒーを飲もうとしたが、残念なことにドリップコーヒーを忘れてしまった。コーヒーを諦めて、6時39分に出発した。すでに39分の遅れとなった。急登を登り、6時54分に合戦尾根の頭に着いた。ここでは、槍ヶ岳が顔を出している。そして、燕山荘や燕岳が見える。もちろん今日歩く大天井岳も見える。ここからは、樹林帯を抜けることとなる。展望も開け楽しくなる。なにより、燕山荘が近づいてくるのが気分的に楽にしてくれる。今日は快晴でよい天気だ。過去に御嶽山しか登ったことのない同行者には、この北アルプスの景観はすばらしいであろう。しかし、燕山荘まで行けば、さらにすばらしい北アルプスを一望できる。しかし、相当ヘロヘロになっていることは想像できる。合戦尾根の頭を6時58分に出発し、励ましながら、休憩しながら、7時36分に燕山荘に到着した。万歳!やったぞ!すごいぞ!よし、これで難関は突破したと思った。しかし、同行者は相当お疲れのようだ。ここで、荷物をデポして、空身で燕岳を目指した。7時43分に出発し、燕岳へ向かう。7時58分に「燕山荘1.0km、北燕岳0.4km、直進燕岳頂上」という看板のある分岐を過ぎ、8時02分に燕岳の頂上に着いた。360度の展望である。頂上はそんなに広くはないが、人っ子1人いない。すばらしい展望を独り占めだ。写真を撮りまくって、8時10分に下山にかかる。途中のイルカ岩で写真を撮り、8時30分に燕山荘に着いた。登山口では30分遅れであったのが、ここで予定時刻とぴったりであった。この調子なら、なんとかいけそうだと自信を深めた。それで、8時46分に出発し、大天井岳へ向かった。9時17分に「蛙岩」を通過する。「燕山荘1.2km、大天井岳5.6km」の表示がある。まだまだ先は長いぞ。気は抜けない。そして、9時36分に大下りの頭に着いた。ここには「燕山荘3km、大天井岳3.5km」の表示がある。約半分の中間地点か。ここから大下りが始まるのだ。これを下って登り返すかと思うと、本当に気が引き締まる。大下りを下りきり、さらにアップダウンの尾根を行くと、10時53分に「切り通し」と呼ばれるハシゴとクサリの鞍部に着いた。喜作レリーフがある。しかし、思ったより容易に通過する。階段を登り、11時00分には槍ヶ岳方面と常念岳方面との分岐に着く。直進は槍ヶ岳、左折は常念岳、手前は燕岳5.6kmの表示がある。30分ほどの遅れとなったが、ここで引き返すわけには行かない。同行者もここまでくれば、前進あるのみという。ここで、常念岳方面(左)に曲がり、大天井岳を右手にして右山で斜面を登っていく。そして、11時28分に大天荘に着いた。やっとここまで来たのかと思うと、感無量である。同行者の到着を待ち、11時35分に大天井岳に向けて出発。11時43分に頂上着である。まさに360度の展望である。一点の雲もない。こんな上天気にこの大天井岳に登れたのが最高のプレゼントだ。ここでも頂上には誰もいなくて、この景色を独り占めだ。11時54分に下山し、11時59分に大天荘まで戻った。予定を見たら、12時30分にこの大天荘を発つことになっている。ここで一気に遅れを取り戻した。そして、予定より4分早く12時26分にここを出発し、帰路にかかる。とにかく後はひたすら戻るだけなのだ。戻りにかかったら、ガスが出てきて、周囲は全く見えなくなった。12時42分に槍ヶ岳との分岐に出る。12時48分に「切り通し」を通過、13時45分に大下りの鞍部に着いた。小休止のあと、大下りを登って、14時01分に「大下りの頭」に着いた。「大天井岳3.5km、燕岳3.0km」の表示がある。先を急ぎ、14時23分に「蛙岩」を通り、14時53分に予定通り、燕山荘に着いた。やれやれ、やっとここまで戻ってきた。さあ、後は下るだけだ。名残惜しく、燕山荘を後にして、15時11分に下りを開始した。予定より約20分の遅れだ。稜線上には「中房温泉まで5.5km」の表示がある。しかし、思ったより早く下ることができた。下山のみということで、気が焦っていたのであろうか。さて、15時37分に合戦尾根の頭を通過、しかし、ガスのためいまいた稜線すら見えない。15時46分に合戦小屋に着いた。すでにここで予定よりわずかの遅れとなっていた。16時01分に富士見ベンチ、16時20分に第三ベンチ、16時39分に吊り尾根を渡り、16時39分に第二ベンチに到着。ここまで下山して気分的に余裕が持てた。16時55分に第一ベンチに着き、休憩後の17時02分に出発して、17時22分に中房温泉の登山口に着いた。トイレ休憩をして、17時29分に出発し、17時36分に駐車場へたどり着いた。やった!やり遂げたという満足感がこみ上げる。後は、有明荘の温泉に入り、帰路につく。疲れており、交代で運転しながら、23時15分に帰宅した。